"Mair, Ma lad !" (メアー、私の息子よ!) マーマレードの誕生
時は1700年を過ぎた頃、激しい嵐が英国スコットランドの東海岸を襲いました。一晩中、風はすさまじい音を立てて吹きすさび、海は荒れに荒れました。
港に停泊中の船はいかりを引きちぎられ、北海を航行中の船は近くの港にあわてて逃げ込んだのです。その嵐の中を、一隻のスペインの貨物船が、帆網も帆もずたずたになってダンディーの小さな港に避難してきました。
リースへ向かう途中だったこの貨物船は嵐で航行不能になり、船長は大量に積み込んでいた"Seville Sour Orange"(スペインのセビル地方で取れる苦いオレンジ)を売りさばく必要に迫られました。
翌日、ダンディーの小さな食料品店の女主人ジャネット キーラーはいつものように店で働いていました。夫のジェームスは、港の様子を見に行ったままなかなか戻ってきません。いい加減にイライラしてきたころ、やっと夫は戻ってきました。夫は妻に"船いっぱいのオレンジを二束三文で買い叩いてきた。どうだすごい買い物だろう"と得意満面で言うのでした。
ジャネットは知っていました。そのセビルオレンジは苦味が強くて食べられた代物ではないこと、つまりほとんど売り物にはならないことを。当時このセビルオレンジは化粧品や薬の材料として使われていたのでした。転んでもただでは起きないスコットランド女性らしく、ジャネットはこの状況を逆手に取ってやろう決意しました。オレンジを運ぶための荷馬車を手配し、庭で遊んでいた一人息子のメアーを"Mair, Ma Lud !"(メアー、私の息子よ!)と手伝いに呼び急いでこの食べられない大量のオレンジの砂糖煮作りに取りかかりました。
こうしてできあがったのが、"キーラーオレンジマーマレード"です。(マーマレード)の語源はこの時ジャネットが息子のメアーを呼ぶ声と言われています。これは夫のジェームスキーラーの面子を救っただけではなく、夫妻とその子孫に一財産をもたらすことになりました。
キーラー家はその後代々このマーマレードを作り続け、1797年に"James Keiller & Son"が設立されました。そのダンディーマーマレードは大英帝国時代に英国からそれぞれの植民地へ輸出され、世界的な保存食として現在まで親しまれてきたのです。
数々の賞を得たダンディーマーマレードは1797年から1950年頃まで陶器の容器を使用していましたがそのマーマレードジャーは今ではアンティークとして販売されています。
今回日本で初めてご紹介するこのダンディーマーマレードは本場英国でも販売されていません。1700年当時と同じレシピーで作られた まさにオリジナルのマーマレードです。1700年当時のマーマレードの味を楽しんでください。